
発行日:2009年10月19日 月曜日 |
戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
挨拶といえばごきげんよう、という女学校にどうも馴染めなくて浮いてしまう、言うなれば異分子(イブ)の阿部欣子こと、べー様。
平々凡々とした彼女に、同じクラスの可憐な少女・三輪小枝(さえだ)
が託した1冊のノートから、少女達の悲哀、戦争の愚かさ、そして『倒立する塔の殺人』の示唆する殺人が明らかになっていきます。
犯人は誰だ!と探すような乱暴さも裁きもここにはないです。ぐいぐい惹かれるまま『倒立〜』という迷宮に彷徨うよな、そんなミステリー。逸品です!
明日、自分が生きているか判らない状況下に、自分のことを友人に語り、分かち合って——時間を共有する……。
それがどれだけ重要なことなのか、はっとさせられました。
たとえ自分が消えてしまっても、私のことを知っていて、覚えていて欲しい…。ノートを綴る少女達の静かな覚悟が漂います。
作中には多くの海外文学、絵画も登場します。
『白痴』『カラマーゾフの兄弟』『地獄』…エゴン・シーレやムンク。
世界文学、という名で覆われているけれど、それらに描かれた表現にはしっかりと毒を含まれているそうで…(どことなくエロティックだったり思想が偏っていたり〜等)。
「早すぎる本ってないと思います」とは作中の言葉です。確かにその通り。でも、その後の趣味趣向の方向性が決まるとこでもあるので…本との出会いって本当重要です。
『倒立〜』の殺人にも多大な影響を与えているこれらの文学たち、ちょーっと読んでみたくなりました…!
※ちなみにこちらの『倒立〜』も、毒はたっぷり含まれております。
小牧
書店勤めのイラストレーター。本に囲まれているのが当たり前。可愛いほのぼのが好きという反面、陰鬱綺麗なのも好きだったりする。
『キラリと輝くおしゃれな年賀状2010』(インプレスジャパン)等。
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