
発行日:2010年1月11日 月曜日 |
生ぬるい水に囲まれた孤島。ここにはかつて、政府によって造られた一大遊廓があった。捨て子の姉弟、白亜とスケキヨ。白亜は廓に売られ、スケキヨは薬売りとして暗躍している。美貌の姉弟のたましいは、惹きあい、そして避けあう。ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が…。第21回小説すばる新人賞受賞作。
江戸時代の遊郭を思わせるが、そうではない。どの時代の、はたまた、どの国の物語なのか。暗く湿った水路と空気に囲まれた、閉ざされた島という舞台をはじめとして、なにやら不思議な浮遊感が、物語全体を包み込んでいます。
伝説の遊女の名を継ぐ少女白亜と、同じく美貌のスケキヨは、姉弟として育てられ、他人への不信感や島に対する虚無感のなかで、お互いだけを頼りに成長してゆく。運命が二人を引き裂き、その後大人になった白亜の目線から、物語が語られる。スケキヨを忘れることのできない白亜。裏華町を仕切る男、遊郭の上得意、遊女仲間、すべての人物の周辺にスケキヨの影が漂います。やがて、スケキヨと思われる人物の暗い噂を耳にし―
そして最後に待ち受ける、破滅的で甘美なラストシーン。
ストーリーもさることながら、香りの表現が絶妙です。湿った森に漂う香り、遊郭の部屋を漂うお香の匂い、丸薬を飲んで白亜の体から放たれるという香り…読んでいるこちら側にも漂ってくるような香りの描写にうっとりとします。
映画かアニメーションを見ているような、とても映像的な美しさを感じる物語。宇野亜喜良氏の装画がまた、怪しく甘美な物語に花を添えています。
小倉マユコ
イラストレーター
2009年よりフリーのイラストレーターとして活動を開始。抒情性あるイラストをこころがけています。2009年二科展デザイン部門入選。2010年1月に初の企画展を予定。
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