
発行日:2010年1月18日 月曜日 |
宿した命を喪った夫婦。闇にとらわれた少年。愛猫の最期を見守る老人。ままならぬ人生の途に「奇跡」は訪れた。濃密な文体で、人間の心の襞に分け入ってゆく傑作長編。
「モンは猫鳴りの容れ物なのだった」
物語の軸になっている「モン」という猫と、その家族。
ほのぼのペット愛なんていう生易しい物語ではありません。
亡くした子供に囚われている女。
ブラックホールの闇に堕ちてゆく少年。
死を恐れる老人。
モンという絶対的な存在が物語を引っ張ります。
モンは淡々とそこに居て、生きています。
モンの心理描写などは一切ありません。
オレンジ色の毛をなびかせて、子猫の死骸を食らう大猫モン。
庭石の上で外の猫に吼えるモン。
やがて老い、弱り、死を待つのみになったモンと、飼い主の葛藤と哀しみ。
「まだ逝くな。まだ早い。いや、もういい。もう充分だ。いやだめだ。、今はまだだめだ、せめてもう一度だけ見逃して・・・。」
一歩一歩確実に「死」に向かって歩いてゆく大猫は、戸惑い恐怖する飼い主を慰めさえするのです。
抜群の文章力とセンスを持つ沼田まほかるさんだから書けた物語。
ペットを飼った事がない人でも、共感できる部分が多々あると思います。
恥ずかしながら、私はラスト2Pだけ(だけでも!)を読むだけで、泣けてしまいます。
読んでいる内に、胸が苦しくなって本を閉じても、また開いて読み始めてしまう、そんな一冊です。
ななおん/NANAON
http://urananaon.atukan.com/
微妙なセンスのイラストと文章で、幅広く支持される事もなく地味に生息しています。 面白いのが好き。ブログはそれなりに更新中。本と映画とお酒があれば生きていけるよねぇ。