
発行日:2010年4月26日 月曜日 |
楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
家の焼け跡に生えたきのこ、楽譜にかかれた音、火傷の傷・・・。
人々の思い出を標本にする「標本室」で働くわたしと、標本技術者の弟子丸氏とのひそやかな愛が描かれた小川洋子さんの短編です。
愛は「漂う」という表現がしっくりくるのに、弟子丸氏からプレゼントされた靴に足が「支配」される様な、実在と不在の怖さが心地よい物語です。
「この標本室と出会える人間は限られているけど、本当は誰でも、標本を求めているものなんだ」
人々は色んなものを標本にして欲しいと物を持ち寄り閉じ込める。けれど、その行為は「物を閉じ込めた」ではなく「心を視覚化した」に近いのだと思います。そうして、人々は辛い思い出を標本室に置いて去ってゆく。
あなたが標本にしたいものはなんですか?
花房ゆかり
フリーのイラストレータ。時々デザインの仕事も。
女の子らしいものを空想して描くのがモットー。
HP:http://8723artworks.xxxxxxxx.jp/