
発行日:2010年5月24日 月曜日 |
医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の劣等医学生・天馬大吉はある日、幼なじみの記者・別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。「碧翠院桜宮病院に潜入してほしい」。この病院は、終末医療の先端施設として注目を集めていた。だが、経営者一族には黒い噂が絶えなかったのだ。やがて、看護ボランティアとして潜入した天馬の前で、患者が次々と不自然な死を遂げた!彼らは本当に病死か、それとも…。
闇に光を当てれば、隣に別の闇ができるだけ。光には闇が寄り添う-巌雄が白鳥に言う台詞。この言葉に出会ったとき、この世界の理(ことわり)を見た思いでした。現役の医師でもある海堂氏は、当作で現代の終末医療の実態を描いています。医療の抱える光と闇を描くとともに、誰もが抱える光と闇を描き出し、死について語ることで生の輝きを浮かびあがらせているのです。
海堂作品でも最もミステリー色が強い作品ではないだろうか。院長との面会後、失踪した元ヤクザ。次々と死を迎える入院患者。碧翠院にまつわる黒い噂・・
キーを握るのは碧翠院のホームページに隠された黒い小部屋「レディ・リリィの部屋」と螺鈿の十字架。碧翠院の美しき双生児姉妹、小百合とすみれ。レディリリィは2人のうちのどちらなのか。それとも・・?
医療のさまざまな問題をテーマにして、すべての著作が「桜宮市」を中心とした架空の世界で繰り広げられる「海堂ワールド」。共通の人物も主役になったり脇役になったりしながら登場します。これが面白くてクセになっちゃう。
そして、見事なトラップ。謎が明かされてはじめて、「あ~!そういうことだったのか」としてやられます。一字一句気を抜けません。海堂トラップはいたるところに仕掛けられているのです。
ほんじょうれいこ
画家・イラストレーター、ボタニカルアート講座講師。対極にあるものをひとつの画面に描くことをテーマに現代アートを制作。2010年はバングラデシュで個展。小説も映画もちょっと猟奇的なものが趣味。小説はロジカルに作者の意図を読み解き、映画は雰囲気に酔いしれるのが私の楽しみ方。
サイト「REI'S FLOWER ROOM」>http://www.geocities.jp/reih_flower/