
発行日:2010年5月31日 月曜日 |
本書は、ただの怪談話ではない。恐ろしいという部分は生きた人間の無情にだけ現れている。あとはただただ、もの哀しく、暖かく、涙だけが出る。
本書の一編「赤い絆」は、著者が子供の頃叔母から聞いたという話らしい。東京の奥で起こった話だということで、東京生まれの私には、近代にそんなことがあったのかと、ゾッとした。この「ゾっとする」のは怪談の話ではなく、人間達の対応だ。それから、死ぬということがどれだけ恐ろしいか、死ぬまでの過程がどれほど苦しいのか、一人ということがどれだけ哀しいかなど、生きている人間としての恐ろしさが描かれている。
それでも救いがあるのがこの本の特徴だ。心に何かを残す怪談話は、民話「飴屋の幽霊」以来だと思う。
これは大正の話。ある夜、遊女と学生が叔母の家に訪ねてくる。その二人は両手を赤い帯揚げで縛っていた。これが二人をつなぐ絆だった。この「絆=帯揚げ」という部分が後々までキーワードとして出てくるのだが、これが本当に切ない。
この二人は結局のところ、駆け落ちで、心中を考えていたのだがそれを止めようとして神職についている、著者の曾祖父や祖父、村の医者などがかけずりまわり、最後には親が出てくる。それをずっと眺めているのが寝物語をしている少女時代の叔母なのだ。
子供視点の大人の世界がとても無常で、読みながらなんとかしてあげたいと、心がリンクする。この一連の騒動の話には、恐怖体験を子供に聞かせるという意図だけではなかった。
最後に著者が言う「お帰りなさい」という言葉で、電車の中で読んでいたにも関わらず泣いてしまった。この言葉で泣いたのは私だけではなかった。一体誰が泣いたのか?ここを是非読んでいただきたいです!